50年の時を超えて
久々に面白い本に出合い一気読みしました。
今から50年前、連合赤軍が起こした「あさま山荘」事件。
その直前に内部メンバー12人が総括と称するリンチを受け死亡しました。
永田洋子率いる連合赤軍。
その末端メンバーに属し、リンチに関与した女性がこの小説の主人公です。
永田洋子に可愛がられ、寝食を共にしながらも、繰り返される壮絶なリンチを目の当たりにし、闘争に意味を見いだせなくなり逃亡します。
この小説はフィクションなのかどうかは定かにされていませんが、永田洋子を始めとする登場人物の名は見聞きしたことがあるので、限りなくノンフィクションに近いのだろうと思いながら読み進めました。
当時、このリンチ事件には大変な衝撃を受けたものですが、次々起こる闘争やテロに目が奪われ、その詳細を知ることもないまま過ぎていました。
あれから50年たち、主人公の目を通して見たあの出来事は、永田洋子の感情のみに支配されていたのではないだろうか。
思想など存在しなかったのではないかと虚ろな思いにとらわれます。
高齢となった主人公が、消すことの出来ない事実を背負いながらも、淡々と強く生きていく姿にほっとする思いの読後感です。
最後の2ページに50年がギュッと詰まっていて、心もギュッとなりました。
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学生運動盛んなあの頃、私は三無主義(無関心、無気力、無責任)と呼ばれる平凡で呑気な学生でした。
出来が良い従弟が京大を受験することになった時「あんな大学へ行くと赤軍派に入るかも知れないからやめさせた方がいいよ。」と私の母がえらく反対したのを思い出します。
今では笑い話です。