心に残る優しい思い出

毎日ザックリしか目を通さない新聞だが、「くらしの作文」は365日欠かさず読む記事。


読者の投稿と言う形で300字くらいの短い作文が掲載される。
作者の想いが凝縮されていて、いつもホロッとしたり感動したりで、1日のスタート時間の心を温めてくれる場所。


~一昨日の作文から~  (全文)


ー指のおかあさんー
今日も元気に学校へ向かう娘を見送るとき、2年前のちょうど今頃、小学3年生だった娘が登校を渋るようになったことを思い出した。
私は登校を無理強いしようとは思わなかった。ただ、すっかり弱気で「お母さんと一緒にいたい」という娘を何とか励ましたいと考えた。その時何かのテレビ番組で見た”腹の指に書かれたキャラクター”をふと思い出した。
私は登校する娘のお母さん指の腹に、マジックでニコニコ笑った顔を思い描いて、娘に伝えた。「あ母さんは学校について行けないから、代わりにこの指のお母さんが一緒に学校へ行くよ。何か嫌なことや辛いことがあったらこれを見て、お母さんが応援してるってことを思い出してね」
それから毎朝、娘は指のお母さんの付き添いで登校した。指のお母さんは、ある時は顔からはみ出るくらい大きな口を開けてわらっていたり、ある時はウインクしたりして、ずっと娘を励まし続けてくれた。少しづつ元気を取り戻していった娘は、いつの間にか、また楽しく学校へ行けるようになっていた。
指のお母さんが付き添いをやめて随分たつ。でも私には、見えなくても娘の手に今でもいつでも指のお母さんがいて、私と一緒に娘を応援してくれている気がする。



娘さんの不安な気持ちとお母さんの優しくて祈るような気持ちが伝わってきて、自分の子育て時代を思い出した。


仕事に追われるような日々を送っていた頃、夜勤で私が不在の時など食卓テーブルの上に必ずおやつと一緒に手紙を置いて出かけていたことや、末っ子の次女が学校へ行き渋り、悩んだことを。
新聞の投稿者のように優しいばかりではなく怒ることの方が多かった私。
でもある日「学校へ行きたくない」と言った娘に、その日は珍しく怒らず、学校を休ませ、二人でのんびりと満開の桜を見に出かけた。


次女にとってそれは忘れられない出来事だったようで、結婚式の"両親への感謝の言葉"の中で嬉しかったと話してくれた。


ずぅっとずぅっと心に残って、人生を支えてくれるのはそういうことなんだなあ!
日常の中にある何気ない優しさが一生の思い出となるんだなあ!と改めて感じた。


遠くの動物園や遊園地へ行ったこと、毎年海でキャンプをしたこと、すごくヤンチャを言って高価な物を買ってもらったことなどはほとんど忘れているのに。


楽しみながら子育てをすることができなかった私だが、自分の子ども達には伝えたい。


長い人生の中の子育て期間はほんの一瞬、優しい思い出を沢山作ってあげて・・・と。

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