兄のこと

私には5歳離れた兄がいる。

7年前に脳のリンパ腫を発症、治療を重ねたが、少しづつ身体も脳も動かなくなり、今は全介助の身となって施設のお世話になっている。


7年前、私たち二人の最愛の母親がなくなり、気落ちしていた直後の発症だった。


近くの総合病院では治療が難しいと言われ、名古屋の大学病院に転院したが、放射線治療の予後は芳しくなかった。


いろいろなことが出来なくなる中、酒にはひどく執着し酩酊するまで飲む毎日。

飲ませたくなくて阻止する義姉との間では毎日のように騒動が起き、helpの電話がよくかかってきた。


ある時など、少し目を離した隙に、隠してあった車のキーを持ち出して運転、事故を想定し目の前が真っ暗になった。


専門窓口の紹介で遠くの病院へ入院した時には、携帯電話で知り合いに電話をかけまくり、あげくには無断外出。タクシーと電車を使って自宅へ帰ってきた。

施設のショートステイではスタッフに暴力を振るい強制帰宅。


なかなか現状を突破することができない状態が続き周りが疲弊、・・・


そんなある日、突然兄が大きな発作を起こし、以後言葉を失い、歩くことも出来なくなり今に至っている。


思い返すと壮絶な日々だったけれど、義姉やその子ども達と共に悩み、考え、行動した日々は今になっては貴重な経験だ。



今日は入所先の施設へ兄の面会に行って来た。

兄は、自分が皆に心配や迷惑をかけたことなど知らぬ穏やかな表情で眠り続けていた。



人生、何があるかわからないけれど、なるべく周りに迷惑をかけない老後でありたいと願っている。

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